匿名性が高いネット社会において、誰もが気軽に情報を発信できるようになりました。それにともなって匿名性ゆえにいわれのない誹謗中傷の書き込みが起こるようになり、それによって実質的な風評被害や損害が出る事例も増えています。
では匿名で書かれた誹謗中傷の情報発信者は特定できないのか?
ネット社会には情報の「発信者」と「受信者」以外にその情報を媒介するプロバイダ、サーバの管理・運営者等が存在します。
誹謗中傷を誰が書いたのかの特定にこのプロバイダ、サーバの管理・運営者等の存在が重要になってきます。
権利を侵害されたと主張する者が当事者間で解決しようとしても、情報の削除の要求に応えない、発信者が誰だかわからないという問題にまずぶち当たり、このためプロバイダ、サーバの管理・運営者等に対して「情報の流通の防止の要求」「発信者情報開示の請求」を行います。
その過程で情報の違法性の判断が難しいとか実際に対応した場合の責任の所在が不明確などの問題が出てきます。
権利を侵害されたする者は誹謗中傷を削除しろと言い、それに従って運営者が削除したら、今度は情報の発信者が自らの表現の自由が侵されたと主張する場合もあるということです。
このため、誹謗中傷に関するブログや掲示板のプロバイダ、サーバの管理・運営者等に対する削除依頼に対して、民事事件ではほとんど発信者情報の開示はされず、被害者救済が困難になります。
こうした問題を解決するためにできたのが特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律です。
この法律では、プロバイダ、サーバの管理・運営者等による自主的対応を促し、 その実効性を高める環境整備が目的で、情報の発信者の責任として他人の権利が侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき、また権利を侵害されたとする者から違法情報の削除の申出があったことを発信者に連絡し、7日以内に反論がない場合は発信者の情報を削除できるとしました。
これにより発信者の開示の要件は、請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであること、また損害賠償請求権の行使のために必要である場合は、情報の発信者の開示請求を求めることになりました。
法律の話をせざるを得ず、少しややこしく感じられたかもしれませんが、誰が書いたのかの情報はわかる可能性が高いといってもいいと思います。その手続きは面倒ですが・・・
ネット上での誹謗中傷において、特に誰が書いたのかがわからずに実際に損害を受け、被害が出ている場合には損害賠償請求うんぬんの話の前にまず発信者が誰なのかを特定する作業を行ったらいいでしょう。
具体的な行動に移す場合ですが、法律に関する専門知識が必要になるため弁護士に相談するのがいいでしょう。